消えかかる記憶の寝言3

渡るつもりなんてなかったのに、人生常々渡り鳥。カトウリュウタの寄港地ブログ。

「ドラゴンクォーター」カプコン

そらをみにいく


たったそれだけ。
世界を救いたいわけでも魔王を倒したいわけでも宝物を手に入れたいわけでもない。
空が見たいだけ。
それがこのゲーム、PlayStation2で発売されたカプコンRPG、ドラゴンクォーターの目的。
いいのか?それで。


アクションゲームで有名な会社、カプコンの地味ーなRPG、「ブレス・オブ・ファイア」シリーズ。
その第五作目にあたるこの作品、正式名「ブレス・オブ・ファイアV ドラゴンクォーター」
ファイブなのにクォーター(四分の一)という
なんとも微妙なタイトル。まぁ意味のあるタイトルなのだけれど。


なぜ突然ゲームの感想文なんか書いてるのかというと、
このゲームが面白いかったからです。
でもそれだけが理由じゃなくて、
昨日ふらっと立ち寄った電気屋で380円で売られていたからです。

ちょっと待て?
380円てなんだ、ちょっと待て?
キャベツじゃないんだぞ、弁当じゃないんだぞ、食パンじゃないんだぞ?
(昼飯前なのでたとえが食べ物ばかりですまん)
ゲームだぞ?ゲームソフトだぞ?プログラムだぞ?

定価6800円だぞ (たしか)

ゲームソフトの値段というのは非常に変動が激しい。
ゲームに限った事ではなく、
古本屋に行けばウン千円の定価の単行本が100円で売っていたり
「あー昔いたなぁ、こんなグループ」っていうCDも100円、50円で大放出されている。
エンターティメントな商材の値段推移は激しいものなのだ。

にしたって安過ぎだろう、と、思わず買ってしまった。
持ってるのに

二つも買った理由はひとつ、面白いからである。
やってよかった、心底そう思えるゲームというのは案外少ない。
このゲームは確実にそんな私のランキング上位に入る。

ちなみに第一位は「ワンダープロジェクトJ」という
目を覆いたくなるような評価の悪いゲームなので、私の趣味が完全にマイノリティである可能性も高い。
けれどもAmazonの評価を見てもらえれば、マイノリティではあってもゼロではない事がわかる。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/B00009RBZY/250-6848484-0285056?v=glance&n=637394
http://www.amazon.co.jp/gp/product/B0000645MQ/250-6848484-0285056?v=glance&n=637394

過去のゲームをダウンロードできるというニンテンドウWii
ワンダープロジェクトができるなら買ってもいいな・・・


ジャンルは「サバイバルRPG」、早くもうさんくささが漂ってくる。
RPGというとドラゴンクエストファイナルファンタジーというビッグタイトルが思い浮かぶが、全く雰囲気がちがう。
独特といえる。日本人の傾向として、ユニークな作品は基本的に売れない。不遇である。
でもマーケティングで損をしてると思う。

だってこれを「RPG」として売り出すのには無理がある。
そもそもシリーズモノである「ブレスオブファイア」を名乗る事に無理がある。
誰だって「大河ドラマ」と聞けば歴史物語を思い浮かべる、
ブランディングってそういうもんだ。
この作品は大河ドラマを名乗りながらSFを流しちゃったようなものだ。

全く勿体無い。
なにしろこのSF、すさまじく上質で極上に面白いからだ。


主人公を操作して洞窟のような地下空間から、空(地上)を目指す。
ミスタードリラーの逆バージョンと思えばいい。嘘です。
時々現れる敵や組織や国家をなぎ倒しながらとにかく地上を目指す。
たまたま出会った女の子に空を見せてやりたいがためだけに。
多分ただのスケコマシだ(しかもロリコン


とかく世界を救ったり時代を守ったり地球を助けたりしたがる巨大な大風呂敷RPGと比べて
なんと慎ましやかな目的だろうか。
お姫様を助けるためだけに世界をまたに駆けて魔王を倒してしまった
初代ドラゴンクエストを思い出させる。
あの頃は何もかも単純だった。夢も希望も目的も。


しかしこの単純な目的にいやおうもなく奮い立たされる。
はげしくのめり込む。
俺も見てぇ!!って思う。
そして号泣する。
そんじょそこらの映画じゃ味わえないこの感覚、
これこそ自分で能動的に参加することが出来る、ゲームの醍醐味なのだと思う。


ストーリーがいいだけなら小説を読めばいい、ビデオを見ればいい、
このゲームが何と言っても素晴らしいのは「ゲーム」の部分である。
やたらと難しい、激しく敵が強い、本気でこちらを殺そうとしてくる。
だから返り討ちにしてぶっ殺す

言葉が悪いがそういう感覚で
Aボタンを押していれば倒せるスライムとは存在意義が違う。存在感が違う。
「サバイバルRPG
この聞きなれない言葉の意味が、先に進むに連れてひしひしとわかってくる。
生き残る事、サバイバル。
ただ物語をなぞって歩いていけばクリアできるゲームとは土台が違う。
敵たちが本気で襲い掛かってくる。
少し大人気ないんじゃないか、と泣き言いいたくなるくらい有無を言わさず殴りかかってくる。

全力で「生きる」この難易度が
このゲームの評価を落としている部分であり、もっとも面白い部分である。
必死で手に入れたものほど価値があるものなのだ。
それがただの青い空だとしても。


このゲームを乱暴に分類すると、
バイオハザード不思議のダンジョンシリーズを足して
何か大事な部分を引いた、そんな感じになる。
上記二作の「売り」の部分をとっぱらっちゃったゲームなのである。

バイオハザードは「恐怖」を題材にしてゲームに一大革命を巻き起こした。
薄暗い世界観、突然襲ってくるゾンビ、悪夢のようにしつこく迫ってくるゾンビ。
生き残ることが困難な状況からの脱出、だから「サバイバル」

ドラゴンクォーターにはビジュアル面での恐怖はない。
それに死んでしまっても再開できる。
むしろ死んで再開すること前提のゲームである。
トライ・アンド・エラーである。

そうなってくると不思議のダンジョンが出てくる。
不思議のダンジョンは迷宮の中に入り込みアイテムを集めたりより深く探索したりして
どこかで帰ってこなくてはならない。一からやり直さなくてはならない。
けれども手に入れたアイテムが手元に残っている。
これを集めて戦略性を増していくゲームシステムである。

ここはドラゴンクォーター、そっくり。
しかし困った事に、不思議のダンジョンの売りであるやり込み要素があまりない。
アイテムも、確かに武器がそこそこあって多少集め甲斐があるが
魅力は少ない。
あくまでストーリーを追いかけるゲームなので、振り出しに戻ると若干いらっとくる。


こんな具合に、両二作のいいところを取り除いちゃってる不思議なゲームである。
取り除いちゃってるのに面白い、まったく不思議である。
陰気で鬱々とした冒険がひたすら続くが
クリアしてこんなにも良かったと思えるゲームは少ないと思う。
興味を持った方はぜひトライしてもらいたい。

380円だし
(自分もプログラマーだが、自分の作品がここまで値崩れしてたらへこむだろうなぁ)