消えかかる記憶の寝言3

渡るつもりなんてなかったのに、人生常々渡り鳥。カトウリュウタの寄港地ブログ。

エコール

ロリコン映画の最高峰と絶賛され、
妖しくも美しい少女の無垢さを描いたフランス映画。
下記賞を次々と受賞している。

2004年サンセバスチャン映画祭新人監督賞
2004年ストックホルム国際映画祭最優秀作品賞、最優秀撮影賞
2005年ゆうばり国際ファンタスティック映画祭審査員特別賞


ロリコンの妻のためにレンタルしたのであって、
けして自分のためではない。ほんとです。ほんとなんですってば、お母さん。

登場するのは6歳から12歳の少女。
タイトルの通り、舞台は学校。しかし実に謎多き学校である。
耽美的で抽象的な「ミネハハ」なる小説が原作らしいけれど、
もちろん読んでいないからわからない。

「学校」には、(おそらく)毎年新入生がやってくる。棺おけにいれられて。
少女のみの学校。先生、校長、寮の世話人含め、男はいない。
完全男子禁制生活。だから無垢?

学校がある森は高い壁に囲まれていて、外に出ることはできない。
外に出たりしたら、ひどい罰を受ける。どんな罰かわからないけれども。
噂では、学校のたった二人の先生が、「脱出」を試みて
二度と森から出してもらえなくなった二人、とか。

少女たちは二人の先生からバレエと、生物の授業を受け、
寮に戻る。寮は6歳から12歳までが一人ずつ、6人の生活。
新入生のイリスは、年長のビアンカを慕いながら、
毎晩出かけていくビアンカを含む、この学校の謎に疑問を持つ……。
そして、疑問をもったまま、なんとなくその生活に慣れていく。

ここから、学校の謎、物語がつむがれていく……ってことはなくて、
そんな学園の生活が淡々と描かれるに留まる。


映画の原題は「イノセンス」即ち、無垢。
確かに無垢ととれなくもない表現が続くけれども、
どちらかというと大人の目線から見た都合のよい無垢、
あってほしい少女たちの虚像ばかりである。

私たち大人って、自分たちの過去をすぐに忘れたがるけれども、
自分たちの「無垢」を思い返してみれば、
それがけして綺麗なだけでもガラスのように繊細だったわけでも
真っ白な衣服のようであったわけでもないことに行き着くはず。

この映画では、それら「リアル」な要素はほとんど取り除かれており、
絵画とか、音楽とかのように、ある一面を切り取って作品として仕上げている。
何分だったかわからないけれども、それだけで一本の映画にしているので、
非常に冗長で退屈。

ストーリー性も薄く、見るものを惹きつける謎や不可解な状況がちりばめられながら、
解決も解説も何もないため、なんとなく想像で補うような作りになっている。
この作品の次に作られた「ミネハハ」では、
逆にそれらの謎に即物的な答えを次々と与えているらしい。
「エコール」ファンには不評だったようだけれど、
私には即物的なストーリーの方がよさそうだった。


ずっと以前から思っているのだけれど、ほんと、
芸術家って自己完結するくらいなら、外に作品を出さないでいいのでは。

「美しい」「アーティスティック」「少女の無垢と危うさを見事に表現している」とか、
オナニストオナニストを褒めているようで、
非常に不健全な香りがする、映画界って。
ミニシアター系ってそういうものが多いのはわかってるのだけれど、
面白いものもある以上、ミニシアターそれ自体を捕まえて「悪」ということもできない。

いや、好きな人がいる以上、どんな作品であれ、価値はある、か。

この映画に、少女時代の憧憬を重ねる人がいたけれども、
それは自分の思い出まで美化しすぎていると思う。
美しいものだけを描かれると、それはそれで起伏がなくて退屈なんだな、
と感じました。