消えかかる記憶の寝言3

渡るつもりなんてなかったのに、人生常々渡り鳥。カトウリュウタの寄港地ブログ。

「ぼくらの」鬼頭莫宏

鬼頭莫宏原作のSFロボット・アクション・コミック。
を原作として2007年、テレビアニメ化された。

そのテレビアニメの評判を聞いてツタヤで借りてみた。
レンタルDVD 全12枚、全24話。
私が借り始めた当初は5枚程度しか出ていなかった。
完結編まで長い道のりだった。


物語の舞台は現代(近未来?)地球、東京。
中学生の子供たち15人が中心となって
地球を守るために巨大ロボットに乗り込んで戦う。

このくらいはよくある設定のアニメに思えるけれども
衝撃的な設定が付属する。

・ロボット(ジアース)はみんなで乗るけど一人で操縦する
・操縦者は事前に15人の少年少女から一人選ばれる
・ジアースで時々現れる敵ロボットを倒す
・負けると地球が滅びる
・敵ロボットは一台ずつ現れる

地球が滅びちゃうのだから選ばれた責任は重大だ。
けれども最大の設定が少年少女たちを、やがては大人を巻き込んで
眉間にしわがよるほどシリアスな悩みに叩き込む。

・操縦者は死ぬ


マジかよ!? って設定が重くのしかかる。
笑い一つ怒らない本格的に沈む設定。
巨大ロボット「ジアース」は生命エネルギーで動いてる、ということらしい。

敵ロボットは15体。15人はいつか全員死ぬ。
順番はわからない。象徴的に少年少女が愛用している椅子が並べられ
ロシアンルーレットよろしく次の操縦者を決めていく。
操縦者に決まった少年少女は運命から逃れようと逃げたり
思い残すことがないよう奔走したり
ロボットの呪縛を解くために考察したりする。


それらのあがきがこのアニメ最大の物語であり
15人がそれぞれ持つ事情、環境、
それが我々現代人の日常にリンクし「自分が同じ立場に追い込まれたら」
と考えずにはいられない切実さをもって迫ってくる。

だからこのアニメ、とにかく重い。とにかく暗い。
見たくもないシリアスな場面の連続で鬱になる。
おまけにわざわざよく集まったな、というような
複雑な事情ばかりの15人の少年少女。
一人ずつ消えていく花いちもんめが静かに進行していく……。


なぜ、どうして、どうにか止める方法はないのか。
これが登場人物のみならず視聴者が求める救済であり
物語を見続けるモチベーションになるのだけれど
これがまたちっとも語られずにおしまいまで進んでいく。

これにはこのテレビアニメが、コミック原作を持つ事が
一つの弊害、裏事情として存在している。
ままあることだけれども、原作が終わる前にテレビアニメの方が終わってしまったのだ。

もちろん、であるからテレビアニメにはテレビアニメの結論が導き出されている。
ただ時間の限られたテレビアニメでは随分はしょられた部分もあるようで
原作コミックほどの吸引力は失われているようだ。

私は原作コミックを読んでいないのだけれども
調べてみたところ面白いエッセンスが削られてしまっているようだ。


途中までは「もうほんとどうなってしまうんだよ」と
興味津々で(あるいは救済を渇望して)見ていたのだけれど
どんどん最終話に近づくにつれ「ほんとにどうなってしまうんだ、回収し切れなくて」
と不安にさせられた(そしてそのまま完結した)。

オープニング曲の素晴らしさだけが印象深かった。

原作コミックの方はまだ完結してないらしい。
物語として楽しむのであれば原作の方をお薦めする。