消えかかる記憶の寝言3

渡るつもりなんてなかったのに、人生常々渡り鳥。カトウリュウタの寄港地ブログ。

This Is It / Michael Jackson

King of Pop 最後のステージが劇場公開された。
本人が最後の公演と断言していたロンドン公演のリハーサル風景がまとめられている。
おそらくはロンドン公演のセットリスト順に曲を並べてくれているのだろう。
スタートは「スタート・サムシン」だった。


マイケルの死後、彼の偉大さは多くのテレビ番組で喧伝され
奇行・破産などでしか語られることのなかったマイケルの本当の部分に
改めてファンとなる人も続出したことだろう。


そんな死後のオマージュを見るまでも無く世界中に彼のファンがいて、
世界中のファンたちはマイケル最後のステージのオーディションへ集中した。

なんで気がつかなかったんだろう。
そうだよ、何かしらステージで関わることができたら、
マイケルと一緒に入れたんじゃないか!
20代の頃ネバーランドへ行きマイケルに会うことを夢想していた僕。

そしてそれを実行に移した多くのダンサーたちが
厳しいオーディションを経て選ばれていく。


「マイケルと同じステージに立てるなんて最高!」

選ばれたダンサーたちは破顔し興奮し涙している。
その夢は、リハーサルステージでは実現したが
本番公演はついに永久に行われることはなかった。

そう思うと、オープニングの、オーディション・ダンサーたちの笑顔、
興奮が悲しくて泣けてくる。

映画は、消してお涙頂戴、マイケル追悼の作りとはなっていない。
一人の最高のエンターティナーの、完成度の高すぎるリハーサル風景をまとめた
プレ・ロンドン公演体験映像なのだ。

……だからこそ悲しい。映像の中のすべての登場人物は、希望と期待に満ち溢れている。
太陽の爆発のようなきらめきがスクリーンに閉じ込められている。
この閉じ込められた世界は、二度とこちらの世界で現実化しない。
それを思うと胸が締め付けられる。


そういえば、映画の中ではおそらく、KING の死後の映像は一切使われていない。
唯一新曲の「This Is It」へ、死後ジャクソン兄弟たちがコーラスをつけ完成させている。


ロンドン公演が発表された当初から最近に至るまで
マイケルが本当に歌えるのか踊れるのか疑問視する声が多かった。
なにしろ50歳である。当然20代の頃より老いている。
しかもろくに食事もとらずに薬で命をつないでいたとすればなおさらだ。


だがしかし。
一体それは何の懸念だったのだろう。

圧倒的。圧倒的なステージパフォーマンス。ダンス。歌。動き。
いや全然全盛だ。衰えなんか全く感じない。
動きのキレなんか20代のバックダンサーを何人ならべてもかなわないほど。

とびぬけてる。すげぇ。


今回のリハーサルテープは、おそらくはマイケルが元気にロンドン公演をこなしていたら
表に出ることはなかっただろう。
完成度が滅茶苦茶高いリハーサルとはいっても、やはりリハーサル。
おそらくは、マイケルなり舞台監督なりが、ステージの出来栄えをチェックするために
回していたテープなのだろう。


皮肉にも、このリハーサル映像では、我々が望んでも見ることの出来なかったマイケルを
見ることができる。
ラフに踊るマイケル。マイクやモニターの調子を確認しながら歌うマイケル。
イデアを試してみるマイケル。すこしはしゃぎすぎてしまうマイケル。

彼の完成度の高い、完成品のステージでは見られないそんなマイケルを
まさかここまで堪能できる日が来るとは。
マイケル、まじでうまいよ、歌、ダンス。
それを「ラフに」やってるところがまたたまらなくかっこいい。

衣装もがちっと決めたりせず、私服っぽいフライトジャンパーで踊ったりする。
いやまじかっこいい。


マイケルのファンであり、彼の音楽の、PV のファンである我々にとっては
まさしく感涙するほか無い素晴らしい映画であった。


……このためならBlueray 再生装置、買ってもいいな。
きっとBlueRay で発売されるだろうから。