消えかかる記憶の寝言3

渡るつもりなんてなかったのに、人生常々渡り鳥。カトウリュウタの寄港地ブログ。

僕とネコと離婚物語~ 100 %勝利へ~その19

7章「カトウのやったこと」その


「結局あなたは何をして何をしなかったの」
「そうだな」
僕は原稿を書くたびに邪魔をしてくるネコをうるさくパソコンから遠ざけながら考えてみた。

「僕は、追いすがった。泣きついた。駄々をこねた。そして諦めた」
「カッコ悪いふられ方ね」
「……君が大江千里のファンだとは知らなかったよ……。
しなかったのは、多分赦すことだ。おそらく一番難しい。そして一番自分に必要なことだった」

「赦せなかったの。浮気を? 嘘を? 態度を?」
ネコは興味も無いくせに暇つぶしに聞いてくる。相手をするのもバカバカしいのだが
「いや、多分」

「世間体だ」



この段になってくると、もう夫婦ふたりの個人的なことではなくなってきます。
結婚とは、「互いが一生愛し続ける」契約でも、「お互いを裏切らない」契約でもありません。
(法律上は多分にその辺が保証されていますが)

「家族になること」
これがひたすらに、大きな大きな「契約」なのです。
逆にいうとだからこそ、夫婦の関係は不貞行為が禁止されていたり
離婚時に慰謝料や養育費が発生するわけで
それが無ければただの恋人や同棲と変わりゃしません。法律だって気にもとめません。


元々、私は結婚することを決意したのはそういった「周りを固める」ためでした。
好き合って暮らすだけなら紙切れも役所もいらない。
(もちろん色々メリットはありますけどね)
私は妻に(当時)このように宣言して結婚したのです。

「君を法的に俺のものとしたい」

この契約により、契約違反には当たり前に罰則が発生することとなったわけです。


罰則は犯した罪の重大度で変わります。
もう既にこの連載の最初の方に書きましたが
・罪がある側の年収
・離婚するか否か(行為に起因する不利益、と言い換えてもいいでしょうな)
・不貞回数(肉体関係の回数)
・不貞期間

まぁこのような要素で金額は変わります。
しかしもう一つ、言ってあったと思います。
ここから導かれるのは相場です。
あるいは実際に裁判となった場合に裁判所が判定する金額です。

個々人のやりとりにおいては相場や裁判を意識する必要はありません。
甲と乙が同意すればどんな金額でもどんな内容でも締結可能です。
(だからハンコを押すときは細心の注意をするんですよ?)


あまりに法外な金額であったり常軌を逸した内容であったり
それこそ法的に認められない契約内容であった場合は、
締結後も裁判で撤回することは可能でしょうが。


例えば愛人契約(妾契約)ですね。
私は法律的なことは何も知らなかったものですから、
100%のナイスアイデアとして妾契約を持ちかけたわけですが
妻は拒否しました。
あそこで形だけでも、あるいは私のだした紙だけでも持っていってたら
またちょっと違ったかも知れません。
「法律違反行為を脅して行わせようとした」と証言するに足る資料となりますからね。


実は妻はその後、「あの書類、あなたの考え方の参考になるから記念にくれないか」
と言ってきました。
「あぁいいとも」と答えて、もちろん出しませんでした。
戦いはいつも一瞬一瞬のタイミングなのですね。
太刀を振り下ろすその瞬間にそこに相手がいなければ
絶対に当たらないのです。

私は弱点をぽんと投げ出しさらしたけれど、
その瞬間には妻は太刀を振りかぶっていなかった。
妻が戦う準備をしたときには、(偶然ですが)弱点を隠していたのです。
いやいや。なかなか危なっかしい戦いじゃないですか。



そう。ある段階から、既に「戦い」となっていました。
前段階でほとんどすべての武器を手に入れていた私でした。
妻は私が叩きつけたあの夜から、突然宣戦布告された真珠湾アメリカ軍の如く
慌てふためいた対応を始めなくてはならなかったのです。

……この真珠湾奇襲も諸説あるらしいですよ。特に詳述しないですが。



ここで妻の戦い方を段階を区切ってみていきましょう。
一部にはもちろん私の想像、私の所感も含まれることをご了承ください。


第一段階(黎明編)
・夫婦の関係維持(=夫の扶養のもと生活)
・愛人との享楽的関係を続ける

第二段階(胎動編)
・バレたので離婚(夫の家族に不満があったのでむしろ願ったり叶ったり)
・愛人と堂々と付き合えるのでラッキー
・不倫だから有利な条件で離婚できないけれど、普通に持ち物持って出てくだけだろう

第三段階(激動編)
・慰謝料? 探偵資料? よく考えたらやばくない?
・私(妻)はともかく、不倫相手の人生や生活にすっごいダメージくるんじゃない?
・なんとか痛手を最小限に食い止める方法は……



激動編で妻がとった施策を列記してみましょう。
ちょっと想像を絶するかも知れませんが、
考え方を一方行に偏らせてはいけません、
つまり、今読者は筆者である私に思想的誘導をされている。
それをちゃんと意識して騙されないようニュートラルにお読みください。


「決意して一緒になったのにこんな形で離婚していいのか、と
友人に言われたの。私もそう思う。やっぱり離婚したくない」

「彼とは肉体関係はあったかもしれないけれど、酔っててよく覚えていないし
そういう関係じゃなくて飲んでて話があう、ってそれだけなの」

「慰謝料の痕跡を残したくないから、私が預かってあなたに毎月手渡しでいい?」

「未来ある人だから名前とかを公的なところに絶対残したくない。
裁判はもちろん絶対にしたくない。公正証書も無理。示談書もダメ。
でも払うって約束するから、それでいいでしょう。
払わなかったら探偵資料で訴えればいいじゃない」

「子供、作ってみる?」



この一つ一つに対して話をしていくのもまぁ面白いでしょう。
最初はそのつもりでした。
でも結構腰が砕けそうになるのでやめておきます。
全般的に、慰謝料の減額工作と私は捉えれました。
離婚をとりやめとりあえず2-3ヶ月夫婦関係を続け
何かしら私側の不備を誘い出すかあるいは家族問題を出してきて
有責配偶者としてではなく通常の離婚へ持ち込む、といった
ご都合主義的展開になんとか持って行こうとする蟷螂の斧のように見えました。

この連載の最初の方で「戦うこと、戦う覚悟を持つこと、全力を尽くすこと」
などを書いておいたのはこのあたりに起因します。
あまりに幼稚な戦い方でそんなんじゃティガレックスどころかフルフルも満足に倒せないぜ、
という相手であっても、全力粉砕が礼儀。

でなければ、浸け込まれたらどうするんですか?
子供作ってどうするんですか? ねぇ?


さて。
後はー
公証役場編」
「ワールドカップと日本代表と加藤家」

の二本で終わりになるかな。
長かったな。
公証役場編は二回くらいに分けるかも。

まだ読む?
あんたも好きねぇ。


「好き、とかじゃなくて締りが悪いのよ」
ネコは辛口評論家です。


(つづく)