消えかかる記憶の寝言3

渡るつもりなんてなかったのに、人生常々渡り鳥。カトウリュウタの寄港地ブログ。

勝敗は悲しみの結果でしかないのか

人と人とが争うことは有史以来変えられない現実なのだろう。
しかしそれはすべて否定されるものばかりではない。
つい先月、鍛えぬかれた鋼の肉体をぶつけあい
地上最強の人類を決めるアスリートの祭典、
オリンピックが世界を大いに沸かし、
人類の精神と肉体と、国家のプライドまで背負った戦いが繰り広げられた。

勝者がいて、敗者がいる。
明確な線引がある。
四年間すべてを投げ打った挙句につかめない夢もある。
勝利の影には必ず敗者がいて、涙が枕をぬらしている。

と、いう大変シビアで厳しい世界のことは
トップアスリートと審判の方々に任せておくとして
我々はもっと現実的に身近かに直面している問題の勝敗について
もっと深く考察しなくてはなるまい。

せっかくオリンピックという平和の祭典で
真実努力と友情と涙の結果を正々堂々ぶつけあってたはずの国家同士が
小さな島の領有権をめぐっていがみ合い、
歴史的事実を無視しながら、大人げない争いを始めている。
北と南と西の取り合いに正々堂々としたところがなく、
あっちの国も我らの国も、どっちもやってることがおかしい感じで
いまいちオリンピックほど応援に熱が入らないし
感動の涙が流れない戦いになってしまっていて
これルールとかポイントとかどうなってるんだろうね。

で、その争いの勝敗も偉い人とか税金使ってる人とか
役割持った人たちが勝敗つけてくれればいいのでそっちもほっといて

もっと。
もっと身近な争いってあるじゃないですか。

それは、夫婦の問題とウサギとカメの勝敗の問題。
どちらも大変身近である。
が、
夫婦の問題は、もう勝手に決めてもらって、
結局夫が強いのか妻が強いのかなんてお前らの問題で
惚れたの腫れたの浮気だ不倫だのそういうことで
裁判官を煩わせないで勝手にやれよ!!

というわけで、残った問題はウサギとカメ、なんですよね。
いや最初からこれの話書きたかったんですけれどね、
導入部とか掴みって大事かな、って。
だってタイトルが「ウサギとカメの本当の勝敗」とかじゃ
誰も読まないですよね。読みたくないですよね。
じゃあ読まなきゃいいじゃん!! 何さ!!


・・・読んでくれるんですか?
ありがとう。ほんとは、ちょっとさみしかっただけなんです。
カメのこととかウサギのこととか、もうちょっと真剣に分析したかったんです。
だってあれ、審判がいたかも不透明だし、ルールも怪しいし、
色々不振な点が多いじゃないですか。
検証が必要だと思うんですよ。


■検証1.ウサギとカメの戦いは「その当日」に行われたのか

改めて状況を確認したい。
有力な証言は下記民謡に込められている。

もしもし かめよ かめさんよ
せかいのうちで おまえほど
あゆみの のろい ものはない
どうして そんなに のろいのか

なんと おっしゃる うさぎさん
そんなら おまえと かけくらべ
むこうの おやまの ふもとまで
どちらが さきに かけつくか

どんなに かめが いそいでも
どうせ ばんまで かかるだろ
ここらで ちょっと ひとねむり
グーグーグーグー グーグーグー

これは ねすぎた しくじった
ピョンピョンピョンピョン
ピョンピョンピョン
あんまりおそい うさぎさん
さっきのじまんは どうしたの

http://www.worldfolksong.com/songbook/japan/usakame.htm

この、3番目。
3番目の歌詞にて「どうせ晩までかかるだろう」という見込みがあり、
もし日を改めての対決であったら、一旦それぞれが自宅へ帰る描写があるはずで
総合すると、午前中かあるいは午後の早い段階に、
ウサギによるカメへの侮辱発言があって、
激昂したカメが果し合いを申し入れた、という構図であると考えられる。

激昂したカメが?
しかし、どんなにカメがウサギに対して苛立ったとしても、
これだけ力の差が歴然とした戦いを挑んだりするだろうか。
カメはそれほど判断力のない生き物だったろうか。



■検証2.カメに勝てる目算はあったのか

ウサギによる侮蔑に対して挑む形でカメが喧嘩を買っている。
しかしカメが冷静さを欠いていたとしても、
勝てる勝負ではないことは火を見るより明らかである。
カメはこの勝負で何を示したかったのだろうか。

・この世で最も鈍いのは自分ではない?
  → もしかして、ウサギ、カメの勝負のスタートラインに、第三者が存在し、
    カメはその生き物には少なくとも勝つことができる、ということを
    ウサギに証明してみせる計画だった、とは考えられないか。

・努力する姿さえあれば大体は感動的な結末を迎える?
  → オリンピックでは、足をつったり靴が脱げちゃったりして、
    それでも完走する姿が美しかったり感動を呼んだりするもの。
    カメの目的は、「侮辱されたままでは終わらない」という
    姿勢を見せることだけであって、勝負にならないことは意識していたかもしれない。

・本当に勝てると思っていた
  → だとすればオメデタイにも程がある

一般に、カメは思慮深く無謀でない生き物であることが知られている。
備えあれば憂いなしを地で行く性格から、
何事も起こっていない平和な毎日においてもけして脱ぐことがない、
超重量級の甲冑を常に身にまとっている。
その性格から考えると、上記3つを考察のパターンとしてあげたが、
当てはまるようには思われないのだが、いかがだろうか。



■検証3.なぜウサギは寝たのか

油断大敵、を伝える故事であるこの物語、
確かにウサギは大いに油断し、大いに失態を演じている。
しかし・・・それは本当に「油断」だけのものだったろうか。

「検証1」で見たように、勝負は午前から午後のいずれかで行われたと思われる。
我々の例で最も睡眠を催す時間帯といえば「昼食後」のあたりが最もであろう。
昼休みから一時間ほど経過した14時から15時の間の会議室を思い浮かべていただくと
当時のウサギを彷彿とさせる面々に思い当たると思う。

ただし、ここでよく考えていただきたい。
ウサギは、走っている。勝負をしているのである。
そこにきて、睡魔に負けて寝てしまうとして、
それは、ありうる。油断と、勝負にドラマ性をもたせようとする、
「カメが追いつくまで待つ」の中に、寝過ごす要素は、ある。

しかし、思い出して欲しい。あなたも午後の会議で眠ったことがあると思うが
大体数分、長くて30分、
このくらいの程よい午後の睡眠は、逆に頭をはっきりとさせ、
仕事の効率を上げる傾向があるのだ。
欧米や、日本の一部の会社ではこの午睡、イタリアで言うシエスタを取り入れて
業務効率の向上に役立てているケースがある。

ウサギが寝ることは、あり得たかもしれない。
しかし「晩までかかる」と見込まれるカメの歩みに対して
晩まで寝過ごすだろか。

ここまでの検証から、
事件は昼休みの軽口に端を発し、
(当然動物たちだって働いているだろうから、仕事中にウサギがこんな発言したとは思えない)
昼休み後、おそらく職場には午後半休を申し出て、
(カメの推定完走時間を考えると、昼休み中に勝負が終わるとは考えにくい)
14時~15時くらいの時間帯でウサギはカメ待ちの「ひとねむり」と洒落こんでいる。
ここから、晩までかかるカメのゴール時間を考えると、
勝敗はおそらく18時~19時に決したと思われる。

3時間。
3時間、前後不覚に爆睡するものだろうか?



■検証4.カメが起こさなかったことに対する追求は?

我々は皆重大な一点について語ってきていないのだが、
このレースにおけるコース上で、カメとウサギは一度、交差している。
ねこけているウサギを追い越した瞬間があるはずである。

カメがウサギに対して何もしなかった、
起こすなどの注意喚起しなかったことは、
スポーツマンシップにもとらないだろか。

なるほど、これはただのウサギの過失である。
だが、「検証2」で考察した通り、
カメは絶対的にかなわない絶望的な戦いにおいて、
それでも勝負を挑んだ理由があるはずであり、
それらはどれをとっても「スポーツマンシップ的な全力投球」という美談以外、
考えられないのである。

カメが、自身が勝つ可能性を信じていない限りは、
この勝負は「かなわないけれど頑張ったカメ」という絵が
カメの目的の全てであったはずなのである。

カメが勝つ可能性を持ってない限りにおいては。

・・・とすると、カメはもしかして、勝つ可能性を持っていたのだろうか。



■検証5.昼休み後の勝負と、カメの勝率

私はもともとこの勝負に対して、ある疑惑を持っていた。
正々堂々戦い世界一の座をかけて戦うオリンピック。
偽りのない汗と涙に人は感動するものであるが、
そのオリンピックにおいてさえ、
いくつもの疑惑、謎、不振な判定が存在する。

ウサギとカメの勝負においてはどうであったか。

勝てる可能性が全く見込まれていないカメが
己のプライドを傷つけられて挑んだ勝負。
この勝負においてカメに考えられる「勝利」は、
全力を尽くすことを美談に昇華させる方法か、
ウサギの油断による自滅しかない。

そして、ねこけているウサギを起こさなかったところに、
どうも私は不信感を拭えない。

勝負の発端を考えると、昼休み、食事中の軽口と思われるところから
この騒動は始まっている。
ウサギが食事中に軽口を叩いたのではないかと考えられ、
そうすると、ウサギに何かを服用させる隙があったのではないかと、
そう邪推してしまうのである。

ウサギが耐えがたい睡魔に襲われて3~4時間もの間前後不覚に寝てしまうこと、
しかも勝負のさなかにそのようなミスを犯してしまうこと。

カメが、ウサギの食事に何か仕込まなかったと、
果たして言い切れるだろうか。
カメが「なんとおっしゃる」と怒り、駆け比べを提案するその裏に、
カメには勝てる「目算」があったのではないかと、
私はどうしてもそこが気になってしまうのである。



■最終検証、本当の勝者は?

カメは、ウサギに勝った。
しかしそれは偶然の勝利であり、
今後二度と訪れない勝利である。
ウサギは以後、消して駆け比べで居眠りすることはないだろう。
「何か睡眠を誘発する外的要因、薬物に侵されない限り」

これは果たして勝利と言えるであろうか。
オリンピックにおいても、実力を出し切れず、
優勝候補がまさかの緒戦敗退というアクシデントは
実際にある話である。
そこにはもしかすると「ウサギとカメ」の故事に基づく、
油断とおごりがあったのかもしれない。
オリンピックのその日、その場所で勝利することが、
確かに金メダルを得るための、唯一にして最大の要件である。

しかしそれを得るためにどんな手段を講じてもいいものだろか。

私は、カメの勝利を心から信じることができない。
一度のまぐれで手に入れた金メダルは、
果たして万人の拍手と賞賛と承認を得られるものだろうか。

カメは、本当に真実勝てた、と胸を張れるだろうか。

甲羅があるから無理だろうな。
(胸を張ったらひっくり返ってしまう)


オリンピックを振り返ってみる時、
そう問いかけずにはいられない気がかりがいくつか残っているような、
そんな残念な気分になるのである。