消えかかる記憶の寝言3

渡るつもりなんてなかったのに、人生常々渡り鳥。カトウリュウタの寄港地ブログ。

所詮血塗られた道

セポイの反乱、と言う歴史的事件がある。
東インド会社を設立しインドを植民地支配していたイギリス。
この東インド会社が現地人を採用して組織していた傭兵団を「セポイ」と呼んだ。
反乱のきっかけは、このセポイに支給されたライフル銃の薬包に、
豚と牛の脂が塗られている、という噂がたったことによる。

牛はイスラム教徒で聖なる動物とされ、
インドでは格別の待遇を受けている。
町の道端、店舗の中に入ってきても追い出されること無く
牛は思うままに居座ることができる。

一方豚は、ヒンドゥー教で不浄な生き物とされ、
いかなる理由であろうと豚肉と接触したヒンドゥー教徒
天国へはいけない、と説かれている。

インド人の大多数はヒンドゥー教徒で、残りはイスラム教徒、というくらい
ほとんどの国民に関わりのある牛の脂と豚の脂。
これが薬包に塗られていると、銃に弾を込める際口に触れてしまう。
(口で噛みきって包を空けるものらしい)

東インド会社存在当時、イギリスの植民支配に多くのインド人は怒りを持っていた。
その不満因子を鎮圧するための部隊であったはずのセポイが、
宗教上「タブーな」弾丸に怒り、イギリス側へ反旗を翻した、というのが「セポイの反乱」である。
これ以降、インドはイギリスからの独立の道を歩み出す。
詳しくはWikipedia を。↓
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%89%E5%A4%A7%E5%8F%8D%E4%B9%B1


同時多発テロ以前から、キリスト教圏とイスラム教圏は
穏やかならぬ世情であり続けた。
ユダヤ教イスラム教の聖地「エルサレム」、
そこに武力衝突の果てに生まれたユダヤ人国家「イスラエル」。
パレスチナ問題として現時点の今尚解決の糸口が見えない
泥沼の国際紛争、民族紛争、宗教戦争が存続している。


9.11 同時多発テロ以降、「アメリカとイスラム教圏」
という対立構造が非常に色濃くなってきた。
元々、世界の警察として強権と自前の正義感を押し付けてきた
世界一の大国であるアメリカは、キリスト教圏の最大勢力であって、
中東の国々と当然折り合いが悪かった。

しかし自国へ攻めこまれた経験の無いアメリカであったのだが、
9.11 の世界貿易センタービル破壊を受けて、
「敵はそばに来るかもしれない」
「いや、もう近くにいるかもしれない」
そんな思考を持つに至ったようである。

2003年9月11日のあの事件からもう10年がたとうとしている。
欧米人とイスラム教徒との間には、未だ静かな緊張感が横たわっている。


そして、こんな記事を見かけた。
米国の「South Fork Industries」社は、豚肉を使用した塗料でコーティングされた銃弾の販売に着手した。この新製品を「イスラム過激派向け平和必然的抑止手段」と名付けている。SBC Seattleが伝えた。なおこの弾丸のメイン・スローガンは「豚肉を通しての平和」。弾丸一箱およそ20ドルで、発売以来、日を追って人気が増している。
http://www.kimasoku.com/archives/7193931.html


ああ。
人類は未だ平和を手に入れることはできず、
お互いを受け入れることも理解することも出来ずにいるのだ。
よりにもよってセポイの反乱を、反省するのではなく流用するだなんて。

極東の方では、小さな島国と南北分断された小国家がいがみあっている。
中国との領土問題も解決の見込みはない。
北方領土の方はちょっとは進んでいるんだろうか。

この世界から、人類が、戦争を手放す日は、いつかくるのだろうか。
その日が訪れるとしたら、おそらくその日は、世界人類がかつて経験したことのない、
静けさに満ちた日となるだろう。

遠くでは、今も銃声が響いている。