消えかかる記憶の寝言3

渡るつもりなんてなかったのに、人生常々渡り鳥。カトウリュウタの寄港地ブログ。

スローンとマクヘールの謎の物語/ニンテンドウDS

最近地味に面白いゲームがこれ。
地味すぎて面白いと言ってよいのかどうなのか疑問だけれども
ちょっとしたぽっかり浮かんだ雲のような時間に
ちょこっとだけいじくる、という時間の隙間に入り込んでくるゲームである。

古い映画館の雰囲気と
あっさりとしたジャジーな音楽。
淡々とした語り口調の声もまた良い。この声、大泉洋だろうか?

ゲームは、導入と結末だけを描いた100文字程度の
短い物語の謎解き、となる。
「いったいなぜ?」で終わる物語は、ただ読んだだけでは
常識的に考えてそんな結論には至らないはずの不思議な物語。

そこでプレイヤーは質問していくことになる。
「ある男が自殺をしたが死ななかった。いったいなぜ?」
のような物語に対して
「男は不死身だったのか?」
「どのような自殺方法だったのか?」
といった質問をDS に対してしていく。

要するに「レイトン教授」の謎シリーズの、
なぞなぞとヒントが切り出されたゲームである。
レイトン教授シリーズをやっていて
「町の中歩くの、だりい」
「ストーリーとかいらねぇ」
「ヒントコインとかうざいし」
などと感じている私のような不届きな輩に向いているゲームなのである。

製作もレイトン教授と同じ「レベル5」なので
まぁレイトン教授と自然比べたくなる。声も似てるし。


しかしナゾナゾの質は随分異なる。
レイトン教授のようなバラエティ豊かで
数字トリックや英語日本語のトリック、パズル的なものまであるのに対し

「謎の物語」の方はひたすらに水平思考パズル。
状況と結論が全く交わらないように見える水平状態を
ある事実の発見から交わらせるロジックパズルである。


ちなみに、「スローンとマクヘール」というのは
ゲームの登場人物でもなんでもなく
水平思考パズルの代表書籍「ウミガメのスープ」シリーズの
作者のことである。原作者ってわけだ。


このゲームのもうひとつの特徴は、非点数性にある。
これはゲームとしてはかなり大胆な取り組みだと思うけれども
「うまさ」「速さ」「技術」と言った部分が一切評価されないのだ。

このゲームは、問題を読み、質問を繰り返し、
わかった、と思ったら「回答」ボタンを置いて、解明編の質問に答えていく仕組み。

その過程には「質問した数」「的確な質問」「回答した速度」などが
当然プレイヤーの技術として現れてくるのだけれども
それが数値化されることが一切ない。

正解数をためて隠し要素を発見したり
少ない質問で解いて高い点数を得る、といった遊び方、やりこみ要素を
一切排除しているのである。


これはひとつには、心置きなくひとつの問題にじっくりと取り組む、という
「あせらなくて良い安心感」と
質問することだけを楽しみ、「失敗」や「成功」を感じる必要のない
「勝利脅迫の欠如」がある。


言ってみれば、時間と成果に負われる現代社会に対して
真っ向から否定的態度で臨んでいるゲームと言うわけだ。
アンチリアル、アンチビジネス、アンチ21世紀、
社会退行を声高に叫んだ非常に思想的なゲームであるといえるのである。

世界につきつけた槍。
と評しつつも、ゲームの中身それ自体は地味でエッジの効いてない
淡々としたものなのだけれど。

正直かったるいゲームであるが、
せかせかしたくない、しゃにむに頑張りたくない、
ぬるくゲームを楽しみたい時にはお勧めである。

……ずっと同じノリの問題だから、飽きるんですけどね。