消えかかる記憶の寝言3

渡るつもりなんてなかったのに、人生常々渡り鳥。カトウリュウタの寄港地ブログ。

メッセージ

今思うと、あれは俺へのメッセージだったのかもしれない。
吉水はトイレに殴り書きされたいたずら書きを思い出していた。

急な便意を覚え慌てて入った駅のトイレの個室の中で見た
壁に書かれたメッセージ、そして携帯とおぼしき電話番号。

「愛が欲しいと泣いていないかい? 090-XXXX-XXXX」

妻と結婚して十五年。
不満があるわけではない。かといって理想的な形とも言えないだろう。
会話はほとんどなくなっており、どこか寒々しい部屋の中で
それぞれの時間が過ぎていく。

既に四十後半の年齢でもあり、
今更愛だ恋だなどとは思わない。波風のたたない大人しい日々は
刺激に欠けるのは間違いないが、もう刺激を求める年齢でもない。

愛が欲しいかと聞かれても、もうそんなものに興味はもてない。
だが、トイレの壁が問いかけてくるように感じる。
本当にいらないのかい?
本当に泣いていないのかい?


……
吉水はきびすを返すと、もう一度駅へ向かった。

この衝動。
これこそが、SHO-DO。