消えかかる記憶の寝言3

渡るつもりなんてなかったのに、人生常々渡り鳥。カトウリュウタの寄港地ブログ。

僕とネコと離婚物語~ 100 %勝利へ~その21

7章「カトウのやったこと」その


「……なんか今日は充実した顔をしているのね」
「あぁ。一応完了したんだ」
僕はネコに書類のコピーを渡して見せた。
ネコは紙の上にドスンとのっかった。どうしていつも、ネコは大事なものの上に乗っかりたがるのだろう。

「何が完了したの?」
「ゲームだよ。ゲームが終わったんだよ」
僕は疲弊した身体をソファに預け、吐き出すようにつぶやいた。
「ゲームオーバー。これですべて僕のものになったのさ」



公証役場
なんとなく聞き覚えのある名称ですが実際には何をするところなのでしょうか。
公証役場勤務のおばちゃんに聞いてみました。

公証役場は第三者的立場として、何かを公的に証明する役割を担っています。
最も一般的なのが書類ですね。書類に対して、公的にその存在、内容を認証するのです。
書類は第三者である公証人の立会いと署名によって確実なものとされます。
すべての手続を踏んだ『公正証書』は、裁判所の判決と同じ効力があります。
ですので、例えばその文書内で約束された事項に違反した場合、
裁判を経ることなく法的措置を取ることができるのです。
銀行口座の差し止め、財産の差し押さえなんかがわかりやすい方法ですね」



皆さんお馴染みの池袋サンシャイン60。
この巨大で当時世界最高高度を誇ったビジネスビルの四階に、ひっそりと公証役場が存在する。
周囲のショップの雰囲気と明らかに異なる異質な空間ですぐにそれと気づくことだろう。
私もコンビニに行く傍ら、なんだろうあのスペースはと気になっていたのだ。

何しろ流れ出てくる気が、負のオーラしかなかったから。



「午後半休をとるから、13時にサンシャイン4階に来てくれ」
「証書ってどんな種類があるの?」
「認証証書、公正証書、あとなんか文書に日付だけ入れる証明があるそうだよ」


ある晴れた初夏の月曜日、私は午前中の仕事を終えてエレベータを降りました。
職場の人間は昼休みに食事に出かけています。私がこの日、離婚するとは誰も知らないのでしょう。
私の職場はサンシャインですので、公正証書を取るにはなかなか便利です。
……二度と使うことはないでしょうけれど。

ここで離婚に際しての約束事を記した「離婚協議書」に
私たち二人の署名を入れ、認証証書にしてもらうのでした。
なぜなら、こういった公証役場などの第三者的な法律機関を入れない場合、
明文化された文書(示談書)を持っていたところで
法的効力は非常に弱いからなのです。


私はその辺のことをGoogle さんで調べていました。
↓弁護士ドットコム。
http://www.bengo4.com/
無料で法律相談できるQA 集です。大変勉強になりますし
ひとりで悩んでいる時の強い味方です。

ただすべてに言えることですが
ネットで座って手に入れた情報をすべて「正」だとしないでください。
情報は自分で考え、選別し、判断しなくてはなりません。
どの情報を利用し何を得るためどう使うのか。
結局、強い武器を持っていても、使うのは人間、ってことを忘れないように。



妻及び不倫相手は私にこのように言いました。
「慰謝料は分割して払い続ける、もし支払いが滞ったら探偵資料を
使って訴えればいい、公正証書のような公的な署名はどうしてもしたくない」
私は言いました。
「どこの世界の契約で『口約束』が通るんですかね」


妻は怒ったり嘲笑したり罵倒したりして私の考えやり方を変えさせようとしましたが
私はだまって弁護士ドットコムの書き込みを見せました。
三人の弁護士、有識者
「そいつらの提案、ちゃんちゃらおかしいからー」
と私にアドバイスをくれていました。

言葉は、強い人間が言うほどに強い力を持つ、という特徴があります。
この場合、法的有識者、というバッジが神々しく輝いたわけですね。
情報は使いどころ、使う人によって効力を変えるのです。



そんなわけで、本日はまず、妻と私二人の取り決め分の「認証」です。
不倫相手に対しての分は後日としました。
私たち夫婦は二人の間のことをさっさと決めてしまい
さっさと離婚する方向へ進んでいたわけです。


公証役場で離婚協議書を認証証書化してもらったら、その足で区役所にいこう」
「豊島区?」
「いや。本籍のある区役所だから新宿。本籍が異なる役所の場合、戸籍謄本が必要なんだ」


公証人、というのは元裁判官とかそういう人が多いそうです。
私は事前に公証役場に相談にいき(無料)
公証役場公正証書というものは一体全体どういうものなのか、
ということを聞いておきました。

自分の足で稼ぐ情報には価値がある。
公証人は妻の不倫であり、不倫相手へも責任を追求する旨に関して
「人間として」
同情と共感を寄せてくれました。
それが証書作成に何かしら影響することなどはありません。
公証人は
「その文書が確かにここにあり、現場に来た二名の署名捺印を確かに確認し証明する」
のが役割であり、文書の内容、整合性についてはチェックしません。


ただ、私が事前に相談に行ったときは、世話好きな人だったせいもあるでしょうか
文書の内容まで見てアドバイスしてくれました。
自分の足で稼ぐ情報には、付加価値がある。


その際にこういうことも付け加えておきました。
「何か相手側が不穏な動きをしたらぶっ殺せるように、多少の穴を作ってあります」


そう。現代の諸葛孔明・カトウはどんなときにも手を抜かない。
終わったと思わせておきながらそれが序章に過ぎないような大長編。
すべてが完了するはずの離婚締結、慰謝料締結が
終りではない、ということに気付かされるのは、もう少しだけ、後の話。



ところで、先に離婚してしまっては訴えにくくなるのではないか、
もう終わった話にされてしまうのではないか、
と思う人もいるかもしれない。
しかし実際はむしろ逆に近くて、
「この不貞行為により離婚に至った」という事実があった方が
慰謝料算出に加算される要素になる。
その不倫によって慰謝すべき重大事態がいくつあったのか、の加算要素に、離婚は十分なりうる。

逆に離婚の事実がないと、美人局が可能となってしまう。
不倫のせいで離婚だなんだと慰謝料を請求して
結局離婚しないなんてケースをゆるしてしまいかねない。

離婚を慰謝料問題の解決後に実施する場合、通常一筆入れるそうです。
「この慰謝料は離婚を前提とした慰謝料である」と。
離婚することを約束するわけです。なんか杓子定規ですね。


先に離婚したら逃げられちゃうんじゃないか、と思うかも知れませんが
不貞行為の訴えは発見から三年間可能です。
実際の不貞行為から三年、ではなく発見から三年。
さすがに失踪、国外逃亡までは追いかけられませんが
相手の所在が把握できるのであれば、逃げようとしたら裁判に持ち込む、
そういう抑止力を持つことができるわけです。


ですのでケースバイケースですね。
先に離婚すべきなのか、後にした方がいいのか。


ただ、先に離婚したほうが決定打となりますので
不倫相手へのプレッシャーにはなるかもしれません。
私の場合もそうでした。
妻と不貞相手とのメールにこんなものがあります。


「その離婚届、提出しないで保管しておくことはできないかな?」
「私も隠そうと思ったんだけれど、一緒に出しに行かなくちゃならなくなっちゃった」
(ほぼ原文ママ


離婚されたプラス百万ですからね。
いよいよ、相手も妻もことの重大さに気がついてきたわけです。


学生恋愛のノリとは違うのです。
浮気は罪じゃない。
しかし不倫は犯罪なのです。
(個人的にはこんな法律、クソ喰らえ、って思うけれども、今回は私だいぶ
おいしい目見させていただきました)



(つづく)