消えかかる記憶の寝言3

渡るつもりなんてなかったのに、人生常々渡り鳥。カトウリュウタの寄港地ブログ。

僕とネコと離婚物語~ 100 %勝利へ~その23

7章「カトウのやったこと」その


区役所の事務手続きは事務手続きらしく無機質に完了した。
離婚理由を聞かれることもなく、淡々と。
ただ離婚し籍を離れる妻には選択しなければならないことがあった。
私の籍を抜けて、新たに独立した籍を作るのか
それとも親元に戻るのか。

かくして私の戸籍は私一人のものとなり、
妻は元妻となった。
これで大きなイベントがひとつ終わった。
が、もうひとつ残っている。

「〇〇くんとの示談決着がつくまでは引越しはゆるさないから」

元妻は既に一人暮らし用の家を探し始めていたが
まだ事件は終わっては居ないのだから。


こんなであれば相手の家に住めばいいのに、
と言葉にも出して言っていたのだが
彼女はそれを頑なに拒んでいた。
それはあるいは不倫相手との関係の密度を思わせるものだったかも知れない。
私には計る術もないことだ。

このころの妻のメールを思い出して書いてみる。
「引越し先探すって(旦那に)言っておいたから大丈夫。
泊まりに行くね」
この期に及んでも私を苦しめる理由もまた、私には計り知れない。
あるいはもう既に何かが壊れていたのだろうか。


離婚後、だがしかし上記のようなメールは不要となった。
元妻はほとんど家に帰ってくることがなくなった。
私の居ない時間に着替に帰っていると思しき証拠だけが部屋に積み残されていった。
私は気にもとめなかった。

私の方からそう仕向けた節もある。
週末、友人などを家に呼んで遊ぶようになったので
週末家にいないように言い渡していたからだ。


離婚届を出したのが月曜日。
翌日の火曜日に会社の人間に知らせるつもりであったのだけれど
仕事が忙しくてタイミングを掴めなかった。
そこで翌日水曜日の、よりにもよって昼休みに、
私は私の所属する開発部全員に(親しさとか全く関係なく、派遣社員も含めた全員に)
一斉にメールを出して知らせた。

「合コン上等」
「祝儀返金受け付けます」

冗談としか思えない文面は、あるいは一部の人を不快にさせたかもしれないが
多くの同情と、それ以上の笑いを誘った。


さて。
いよいよ物語は最終局面へと動き出した。
フィナーレはもうすぐた。
だがまだ終われない、終わっていない。
不倫相手との最終決着。
つまりは、

ラスボス、ということだ。


(つづく)