消えかかる記憶の寝言3

渡るつもりなんてなかったのに、人生常々渡り鳥。カトウリュウタの寄港地ブログ。

ゼルダの伝説 スカイウォードソード/ニンテンドーWii

ゼルダの伝説25周年記念作品にして
なぜかひっじょーに地味に発売された感のある本作。
売上も振るわなかったらしい噂を聞いている。

もったいない。

非常に良作であり心打つ名作であった。
もちろん不満点もあるのだが
革新と偉大なるマンネリズムを融合させ
そのすべてがゼルダらしくまとまっていて良い感じであった。

何しろゼルダの伝説はやたらと実験的な作品を攻めていて、
Wii で出せば剣をフルアクションがコントローラを振る作業に、
DS で出せば操作のほとんどがタッチパネルのみという扱いにくさ、
ゲームキューブの時は、普通のコントローラだったけど、
それでも何かしらの奇をてらいたかったのだろう、
「風」を操るゲームとして、移動するにも風に乗らなければならなかった。

総じて、どれもめんどくさかった。
Wiiトワイライトプリンセス」は剣を振ったり弓の狙いをつけたりが面倒だった。
DS「夢幻の砂時計」「大地の汽笛」は移動すらタッチパネル。嫌になってやめた。
GC風のタクト」はダンジョン内こそ普通の操作で面白かったが、
フィールドが海で、風を読んで移動するのが大変億劫だった。

ゼルダ最新作にして25周年記念作品の本作はどうであったろうか。

今回は、「Wii モーションプラス」であった。
どういうものかというと、
Wii であるから、リモコンコントローラを剣に見立てて
敵めがけて振る。するとリンクが斬りつける。ものであった。
これは、Wii 発売と同時にリリースされた
ゼルダの伝説トワイライトプリンセス」において同様で
「まさに主人公になって敵を斬り付ける感触!」
と大いに話題になったものであった。

その延長であるのだけれども、本作、
インターフェースはトワプリから刷新されている。
あんまり記憶に無いけれども、色々面倒があった記憶のあるトワプリに比べ
剣を振る、盾で弾く、アイテムを使う、といった一連の操作が
結構やりやすくなっていたように感じる。

そして特筆すべきは「モーションプラス」である。
これはWii のリモコンコントローラの拡張版で、
従来のWii リモコンに、サイコロキャラメル大の
正方形に近いキューブをくっつけてパワーアップさせるキットである。
1600円くらいだったかで別売りされているか、
Wii リモコンそのものに内蔵された内蔵型も売っている。
このアタッチメントキューブを取り付けると当然リモコンが長くなり
若干重く、扱いにくくなるので、
内蔵型の方がより、スマートに楽しめると言えるだろう。
と言っても気にするほどではないのだけれど。

このゲームはこの「モーションプラス」が必須となっている点に注意である。
モーションプラスが無いと全くプレイできない。起動しない。
購入時に注意していただきたい。


さて、必須としてまでモーションプラスにこだわったゼルダの伝説
何がそれで変わったのかというと、
「角度」と「方向」の概念が生まれたのである。

Wii のあんなコントローラーであるから、
剣に模して、振れば剣を振り下ろす、くらいまでは
普通に思いつく仕様であるであろう。
前作「トワイライトプリンセス」では、
縦に振ったら縦斬り、横に降ったら横切りであった。
理解できる。

今作では、そこに「方向」がついたのである。
右に構えれば、右から左へ切り裂くことになる。
左下に切っ先を構え、左下から右上へ切り抜ける、斜め切り。
まっすぐ突き出せば、突き。
まっすぐ振り下ろせばまっすぐだし、
斜めに振り下ろせば斜めになる。
まっすぐ上にかかげればパワーが溜まってビームを放つこともできる。

今作の目玉である。
こちらのモーションに忠実にリンクが剣を振ってくれるのである。

となると、当然相当な一体感を期待されると思うが・・・
さてどうだろう?
私はWii モーションプラスを、アタッチメントとして装着してプレイした。
Wii リモコンの中に内蔵された、新型のリモコンではなく、
旧型に四角いブロックのアタッチメントをくっつけてプレイした。

若干邪魔である。
若干重い。
そして。多分、多分だけれども、
若干反応が悪い。
多分、新型リモコンでちゃんとモーションプラスが内蔵されているタイプだったら
リンクとのシンクロ率は臨海突破して
最高の臨場感でゼルダを助けに行けたと思うのだけれど

若干、
たまに、
極希に、
しかし、一日に一度くらい、
反応がおかしくなり苛つくことがあった。
これはかなりの頻度である。
つまり毎回、プレイする度に、「どっかで上手く動かないかも」
という恐怖というか覚悟と共にいなければならないのである。

しかも、
しかもである。
左下から右上に斜めに切り上げる、
という「角度」「方向」が、
実は重要な意味をもつことが多いのである。
敵がガードしており、そのたった一つのラインしか空いていない、
ガードをかいくぐって攻撃を当てるためには、
左上でも右下でも右上でもない、
左下から剣を振りはじめなくてはならないのである。

そういう場面がわりとちょこまか出てくるのである。

まぁ正直、適当に振ってるだけでも倒すことはできる。
反応が悪くてもクリアはできる。
「ストレスでこれ以上続けられない!!」ってことは絶対に無いし、
うまく動いている時は本当に気持ちよく楽しい。
没入感がある。

それだけに、一度動作がおかしくなると、悲しい状態になってしまうのである。

この一点が実は、超名作で素晴らしい今作を
「非常に難易度が高い」作品にしている唯一の要因であり、
ゆえに若干売上が伸び悩み、
なんとなく評価も登りきら無い理由の最大点なのである。

最高に面白くする、没入感をマックスにする仕様が、
どうしても技術の限界で(あるいはハードウェアの特性で)
足を引っ張る要因にもなってしまった。
悲しい話である。

ちょっと表現的にわかりにくかったかもしれないが、
極端に例えると、
「右」を押さなくては攻撃を与えられない敵に対して、
極希に(とは言え一日数回は)右と押してるつもりなのに
左と反応してしまう、
そういう苛立ち。
アクションゲームとしては致命的かもしれない。

幸いにして、謎解きと探索が醍醐味のゼルダの伝説
面白さを損なうまでには至ってないし、
うまく動くと本当に気持ちがいいので。
痛し痒し、である。


考えてみればここの所のゼルダの伝説には、
常にこの「痛し痒し」がついて回ってる。
トワイライトプリンセスでは「振るのが楽しいけど面倒でもある」痛し痒し、
夢幻の砂時計大地の汽笛では、タッチペンのみで操作をする、
「なんか反応悪いといらつくけどタッチペンならではの」痛し痒し、
風のタクトでは、「海原を疾走するのが気持ちいいが
風のせいで思うままに進めない」痛し痒し。

いいところだけで収まらないのが、いちいち残念。
それでもそれぞれに間違いなく面白いんだけれどなぁ。
・・・でもやっぱり、神々のトライフォースや、
時のオカリナや、ムジュラの仮面みたいな、
スタンダードな楽しさの方がありがたいようなきがするんだよなぁ。


と思っていたら、先日「神々のトライフォース2」が発表された。
SFC 時代の名作を軸にリニューアルするそうだ。
こいつは楽しみだ。動画はじゃっかんしょぼかったけど楽しみだ。


さて、スカイウォードソードはこのように、
Wii コントローラーの新たな可能性に真正面から取り組んだ
良作であり、
新たな可能性が難易度を上げているのは事実であるけれども
全体として良くまとまった非常に面白い作品であった。

ちゃんと最初からゼルダが登場するし、
ちゃんとさらわれるし、
さらわれながらも時折姿を見せて「助けに行くぞ」という
モチベーションを保ってくれる。

脇役もいい味出したキャラが目白押しである。
映画版ジャイアンみたいな味のあるキャラが
最終的にこちらの涙腺を刺激してくる。
ストーリーがすべてつながった時の納得感と
大きな思いがぐっとくるので
あまりストーリー性を求められないゼルダシリーズの中で
かなりよく出来てよく練られたストーリーであると思う。

しかしやはりゼルダの本質は「謎解き」
ダンジョン、マップの中をうろつき、
一つづつ手に入っていくアイテムの特性を理解して
それまで通れなかったところをアイテムで切り抜け
個性豊かな敵をアイテムで弱点ついて倒し、
ハードの器を集めて最大ライフを増やしていく

さまざまなアクションが要求され、
その度にコントローラを大きく振り回したり
こねくり回したりするので
しょっちゅう疲れてしまうのが玉に瑕。
振り回したりしない、普通の十字キーで操作したいな、
とは何度も思うのだけれど、
それでもゲームの面白さに引き込まれて
コントローラを振り回してしまうのである。

25周年記念作品として、大作となった本作だが、
全体的には思いの外こじんまりまとまっていて
「あれ? 世界地図、こんなもん?」
と思わされるところはある。
世界の有機的な繋がりがないことからわりと狭く感じるところは、
壮大なRPG に慣れている人にとっては物足りなく感じるかもしれない。

しかしゼルダの肝を、ダンジョン探索と
アイテムにより行ける場所が増えていくこと、と捉える人にとっては
間違いなく素敵な数多くのダンジョンと謎が待っている。

ここ数年、いまいち乗りきれなかった新作ゼルダの波に、
ようやく本命のゼルダらしいゼルダが登場したといえるだろう。

風のタクトは船の移動が面倒だった。
夢幻の砂時計大地の汽笛は、
思うとおりにリンクを操作できな苛立ちから
ついに止めてしまった。

トワイライトプリンセスにあった「冒険している楽しさ」
を久しぶりに感じさせてくれるゼルダであった。
ストーリーは明るくもグッと来る内容だった。
モーションプラスコントローラのせいで
アクション、特に戦闘の難易度は高くなっているが
慣れるとその難しさがむしろ楽しくなる。

お薦めの素晴らしいゲームだった。