娘にこの日々のことをなんて語り伝えよう
幼い娘は、日々私に人形の声音(裏声)を使わせるだけで、今世間で何が起こっているのか気づいてはいない。
なぜやたらと保育園を休んで家に居させられるのか。
なぜ残業ばかりで家庭を省みなかった父親が毎日家にいるのか。
娘よ。
父はリストラされたわけではないよ。
やる事がなくて毎日君を風呂に入れてるわけではないよ。
世界ではコロナウィルスが猛威を振るい、
オリンピックが史上初の延期措置となり、
東京での感染拡大が危機的状況になり、
都知事が「ロックアウト」とかいうなんかカッコいい横文字を使ってる、
そんな状況は、君が物事を理解する年頃になったら昔話になってるだろうね。
教科書にはなんて書かれるかな。
「デマに踊らされた人間どもがトイレットペーパーなどの紙製品買い占めに走って世間が混乱した」かな。
「自分のことさえ良ければいい人間たち(主に目立つのは老人)がマスクを買い占めて感染拡大に協力した」かな。
あるいは「ほんとに自分のことさえ良ければと考える民衆がスーパーから食料を買い占めた」かな。
「その当時、日本国民は自らを民度が高い集団だと考えてる風潮がありました。
コロナウィルスパンデミックで曝け出された、
自己責任論と他者を省みない個性偏重の教育は身勝手な国民を、
それこそウィルス感染のように拡散させただけでした。
事態を重く見た良識ある人たちが産んだ規範と活動が、後の世で「助け合おう人はみんなで一つ」運動だったのです」
…なんかそんなこと教える道徳の授業とかができてるかもね。
他者を思いやる心、
それから、他者を想像する想像力。
そういったものが教育には重要、なんてことが後の世に伝われば、
この馬鹿馬鹿しい狂乱も悪い見本として価値があると思うんだ。
娘よ。
何も他人の犠牲になれと言うんではない。
一番大事なのは自分自身だ。
だけれども、自分自身を守るためには、周りを拒絶するのではなく排除するのでなく、
協力することこそが大事なのだよ、と。
小学生くらいになったら、娘に伝えたい歴史。