消えかかる記憶の寝言3

渡るつもりなんてなかったのに、人生常々渡り鳥。カトウリュウタの寄港地ブログ。

ゲーム課金を考える

ゲーム好きのひとりとしてゲーム課金を真剣に考えてみたいと思う。
といっても、既に多くの人が多くを語っているので
今更重複することを語ってもしょうがない。

↓ このブログを読んだのだけれど
http://dochikushow.blog3.fc2.com/blog-entry-2755.html

要約しちゃうと
・ゲームの売り切りモデルは高騰する開発費によって破綻している
・課金以外にゲームメーカーの進む道はおそらく無い
・ゲーム課金をdis るなら、少しは現状と状況を勉強してから言うべき
・嫌なら買うな、課金するな、dis るなら建設的に

こんなところでしょうか。

ゲームの高解像度、ゲーム機の高機能化、大容量化などにより
ゲーム開発費は留まることを知らずに高騰し続けている。
気合の入ったゲームであればあっという間に開発費5億円がとろけていく。
月日も一緒に過ぎ去っていく。
それだけの金と時間をかけて生み出したゲームが批判を浴びて売れなかったらどうなるか。
さらには昨今、違法ダウンロードの問題も存在する。
大型ゲームがヒットせず、たった一作のミスで会社が潰れる、
なんてケースが実際に多発している。

こんな状況で誰がゲームなど作りたいと思うだろうか。

ゲーム作りはボランティアではない。
夢をかたちに、子供の頃の思いを現実に、
なんてモチベーションだけで安月給で働いている人もいるだろうけど
実際生きていくには金がかかるのであり、その人の人件費は
現実ゲーム開発費に乗っかってくるのである。

金を稼ぐ、というのはどうしようもないほどのゲームの現実であり、
それがゲームの出来、評判という、不確定要素(としておく)に左右され、
違法ダウンロードのリスクに晒されているのであるから
ゲーム会社は当然別の手立てを考える。・・・金を稼ぐ手段を考える。

まず、単純なゲーム販売価格そのものの値上げであるが、
これはなかなかうまくいかない施策だろう。
高額なゲームに躊躇されてリリース直後の初期販売額が振るわないと、
もうそれでオシマイである。
巷には中古ゲームが溢れ、Amazonには批評批判が殺到し、
2週間後にはまるで売れなくなっている、なんてこともありうる。

とすればゲーム会社がまず一番に欲しいのは初動、である。

そのために有料コンテンツ(いわゆるダウンロードコンテンツDLC
をゲームの仕組みに取り入れて、
初回特典! 限定封入! 予約者のみに手に入るキャラあります!
それからフィギュアもつけます!
なんかゲーム機本体に変な絵柄を書いた限定モデルも作ります!
買って! 買って! 買って!
の初回特典が発生する。
初回特典を価値あるものにするためには、初回以降の製品と「差」をつけなくてはならない。
差をつけるためには、課金による制限であったり、
ゲーム内に隠し要素をもたなくてはならなくなる。
これによりゲームにおける特殊事情、
「ゲームのディスクの中にはプログラムが入っているのに、それを現金で購入したのに、
全部を楽しむことができない」というジレンマが発生する。
これがDLC が批判される要素のひとつとなる。


課金方法は様々だが、ざっくり簡単に切り分けると、
1.ストーリー課金:物語性のあるゲームにおいて、ここから先は有料、とする課金
2.アイテム課金:ゲームを優位に進めることが可能なアイテムの販売課金
3.オシャレ課金:ゲームの進行には影響はほとんど無いが、見た目が変わったりする課金
4.月額課金:月額使用料金という形で支払い続ける課金
5.プレイ回数課金:プレイするための課金。ゲーセンのようなタイプと、時間回数制限タイプがある

こんな感じだろうか。
一つ一つの課金方法を見ていくが、ゲームではとかく批判されがちだが、
それぞれがそんなに問題があるとは言い切れないと思う。



1.ストーリー課金

例えば、コミックスなんかはどうだろう。
未だ完結の兆しも見えないONE PIECE なんかは、いつ物語が終わるかわからず、
愛読者はストーリー課金としてコミックス新刊を買い続けている。
それがアコギな商売か、といえばそんなことはないだろう。
小説も上下巻に分かれたり、
ドラマやアニメもDVD が数巻に分かれることがままある。
消費者は、その一部だけでは完成していないものを了解の上で
パズルのピースを集めるように集めていく。
ビジネスモデルとしては十分ありうる形態だ。



2.アイテム課金(ゲームに影響)

アイテム課金を私は、ゲーム進行に影響するものとそうでないものに分けてみた。
ゲーム進行に影響するアイテム課金としては、
昨今批判がよく聞かれる一つ、パワフルプロ野球2013 みたいなものがある。
やったことないけど、パワプロは選手を育成して強くし、
チームを強くすることを楽しむゲームらしい。
選手の育成には運要素も絡んでくるため
思い通りの選手を作るには時間と根気が必要だが、
課金することで時間、根気なくともいい選手が手に入れられるらしい。
他にもいろいろ思いつくが、攻撃力が2倍になったり、
歩く速度が2倍になったりすれば、普通にプレイした時よりも
はるかに楽にゲームを進めることができ、無課金のユーザに差をつけることも
容易になる。そういう課金方式である。
これには、ソシャゲでよくある「レアカード率向上!」も含まれるだろう。



3.オシャレ課金(ゲームに影響なし)

一方、ゲームの進行影響は一切ないが、
課金することで可愛い服装、かっこいい帽子、
露出の激しい水着などを手に入れられる課金体系をオシャレ課金と呼称する。
私が決めた。
能力値、何かの確率、そういったことには基本影響せず、
自分の趣味嗜好、主に見た目を楽しむためのアイテム課金である。
もっとも、この「見た目」を売りにしている、
アイドルマスター的なゲームも存在するので、一概にゲーム進行に
影響しないとはいえないかもしれない。
キャラの見た目を変えて楽しむことがゲームの本質となってしまってたら、なぁ?



4.月額課金

MMORPG やオンライン対戦のFPS などでは一般的な課金形態らしい。
私の好きなモンスターハンターの、PC 版もこのタイプだと聞くし、
ファンたちを騒然とさせたドラゴンクエストの最新作、「X」も
月額課金され続けることでゲームをすることができるMMORPG となった。
基本的にはサーバにアクセスして多くの他のプレイヤーとリアルタイムで交わるため、
サーバの運営、ネットワークの料金がかかることから、
ケータイ電話と同じ、月額の利用料金を取るモデルとなった。
この形であるとゲームをやっていようがいまいがお金が取られ続ける。
買い切りゲームとはちょうど対極にある形式と言える。

このモデルが何に該当するのかな、と考えてみたのだが、
週刊誌なんかはこのモデルに近いのではないだろうか。
読むことを辞めない限り、週刊少年ジャンプを買い続け、読み続けるスパイラル。
とはいえ、このビジネスモデルも実在する形態であり、
アコギな商売とは言えないだろう。
金を払い続けることが嫌ならば、退会すればいいのである。
マンガの続きが読めなくなるように、ゲームを続けることはできなくなるが。



5.プレイ回数課金

ジョジョの奇妙な冒険オールスターバトルで批判を浴びたのがこの形式と言える。
スマフォ市場で大ヒットしているパズドラやクラッシュ・オブ・クランもこの形式で、
ジョジョ同様、プレイ回数に一定の制限を設けており、
例えば5回までは無料だけれど、5回遊ぶとしばらくゲームができなくなる。
数時間後にまた5回遊べるようになるが、続けてもっと遊びたければ
金を払え、というような形式。
プレイしたければ金を払え、モデルは、ゲームセンターの「1プレイ100円」に近い。
昨今の無料ゲーム、ソーシャルゲームなんかはほとんどこの形式をとっている。
ジョジョの奇妙な冒険は、ゲーム代金6800円も支払っているのに、
ゲームを連続でプレイし続けられないことに多くの批判が集中した。
買い切りモデルと思っていたユーザが裏切られたわけである。



もう一個、これはストーリー課金と同じだと思ってるんだけれど、
CDアルバムの切り売り、みたいな売り方。つまり曲売りがある。
音楽アーティストはCDアルバムを一つの完成形と考えるので
曲の単品売りではなく(小説の章ごとの販売などではなく)、
アルバム全体を購入して欲しい、と思うかもしれないが、
消費者はほしい曲だけを購入する、というビジネスモデルである。
そういう売り方も、ゲームで可能かもしれない。



さてさて。
ゲームの未来を考えてみよう。
巨額の開発費を必要とするゲームがどうやって利益を、
せめて赤字にならないようにすればいいだろう。
1ゲームユーザ、1消費者としてできることはなんだろう。

1ユーザとしては、「そんなこと知ったことではない」というのが正解だろう。
不正行為(違法ダウンロード)をしているのでなければ、
ほしいものには金を出し、不要なものには金を出さないのが消費行動の原点である。
ゲーム会社の開発費を補填してやるためにゲームを買ってやる、という発想は
消費者側が持つ必要性は基本的に無い。
消費者が金を出さない結果、日本からゲーム開発会社が消えてしまっても
それは仕方がないというものである。
需要と供給のアンマッチは時代のあらゆる局面で発生する自然淘汰である。
哀しいけど。

じゃあ消費者は買いたいものを買い、払いたいお金を払うとして、
販売側は何を考えなくてはならないだろうか。

まずは・・・ほんとに第一は、企業努力して欲しい。むしろこれに尽きるかもしれん。
本当に5億円もの開発費が必要なのか。
開発費は削減できないのか。
オフショア開発でのコスト削減を狙って失敗し、逆に修正コストがかさんでないか。
技術ある人を大事にしないで人材と技術が失われて行ってないか。
広告宣伝費に見直すべき箇所はないか。
博報堂電通に任せて適当な俳優、芸人へのギャラでコストかさんでないか。
そして肝心の宣伝効果は疑わしくないか。

まだあるぞ。
ユーザニーズをちゃんと捉えた開発をしているか。
売上ばかりに目が眩んでないか。
ユーザニーズに翻弄されすぎて信念をもった開発が失われてないか。
プロトタイプは作っているか。ちゃんと試しているか。
リリース日ありきで開発していないか。面白さを真剣に追求しているか。
萌えキャラ、擬人化、安易な流行の導入でゲーム性を損ねてないか。
ユーザに媚を売りすぎて見失ってるものはないか。

開発サイド、販売サイドで徹底的に真面目にやった上で、
それでも売れないというならば仕方がない。
今度は売り切りモデルを小規模な開発、
大規模な開発はMMORPG のような月額課金モデルで、
収支が見込めるよう形を切り分けてやってみる手がある。

それから、これは突飛な提案かもしれないけれど、
開発費を集めながら徐々に開発していく、
スパイラルやアジャイルみたいな開発手法は取れないだろか。
出来る前からユーザに売ってしまい、資金を集める。
作る。
修正する。調整する。意見を反映する。
また資金を集める(新規に)。
みたいな。

いろいろ試すことができないだろうか。
ゲーム業界は音楽業界と同様で、
巨大化し過ぎて身動き取れず、滅びをまちゆく恐竜のように見える。
組織が巨大になりすぎ、関わる人間が多くなりすぎ、
右にも左にも動くことのできなくなった哀れな恐竜。
マンモスIBM を笑ったMicrosoft
そのMicrosoft を嘲笑するグーグル。

歴史の必然なのかもしれない。
滅亡と淘汰があり、そこからまた新しいものが生まれるのかもしれない。

ゲーム課金について、「こうすればいい」って明言できるほどの
模範解答百点満点のものは私も思いつかない。
だが、それぞれのビジネスモデルには先例があるので、
いずれかにたどり着くことはできるはずだ。
ゲームジャンルごとに異なった課金方法が考えられるだろう。

頑張れ、としか言うことはできない。
しかし、ゲームが好きな一小市民、
協力するのはやぶさかではない。