消えかかる記憶の寝言3

渡るつもりなんてなかったのに、人生常々渡り鳥。カトウリュウタの寄港地ブログ。

僕とネコと再婚物語~その7~

「秘密は、期せずしてお袋にまで及び、それを今は後悔してもいる」


前回、前々回をモンハンネタで埋めてしまったのは申し訳ない。
我が家のアイルーも反省している。

今回の「再婚物語」は、当初予告したとおり、
幸せリア充のくせに彼女との仲をひたすら隠し続けた「秘匿キャリア日記」となっている。
離婚を綴った前作とは趣旨も狙いも異なっている。
前作がサスペンス超大作+実用離婚指南であったのに対して、
今回の再婚編に実用的な情報が乗っているかどうか…。

何にしても、人の不幸は蜜の味であろうが、
幸福な見せつけは「リア充爆発しろ」なだけ。
そりゃ疎まれますわな。


「それでも書くのね」
ネコは無関心である。YES にもNO にも興味は無い。


それでも書く。
悲しかった出来事も書く。

離婚し、氷川台へ引っ越し、ネコが下痢をしていた最初の冬、
お袋が他界した。
64歳だった。

入院していたものの、具合も良いように見えたので、
暖かくなったら退院するか、などとのんびり話していた矢先であった。
モンハンしている時にその連絡が来た。
(モンハンについて書いたのも、一応ネタはつながっていたのです)。

病院に駆けつけたところ、一旦は持ち直した様子だったので家に帰った。
しかしその夜状況は一変。
深夜に再び病院に向かった。
医師の方々が賢明な処置をしてくれている中、祈ることしか出来なかったが
お袋は最初に倒れた時からそのまま意識を回復することなく、帰らぬ人となった。

腸閉塞のようなことが起こっていたらしい。
「まさかそんなことになってるなんて気づきませんでした」
という入院先の主治医の言葉に一瞬激昂しかけたが、
見舞いに行っていて「腹が痛い」と聞いていながら重く考えなかったのは
私も同じであった。

入院していれば健康面は万全に見てくれてるんだろうな、
そんな素人考えで安心しきっていたのであるが、
医者も万能でなければ、
全身くまなく毎日チェックできるわけでもない。
それは、本人や家族が気づいてやるべきだった。

悔やんだ。
お袋は離婚の前から入院をしていた。
なので、離婚のことを言わずにずっと見舞っていたのである。
指輪が無くなっているのに気づいてー、
なんて手前勝手に思ってたが、さすがにそれは無理な注文というもの。
退院したらさすがに言おう、なんて思っていてのことだったから、
この件は心のしこりとなった。

とは言っても、もう一度あの頃に戻って、わざわざ伝えるだろうか。
入院してる病弱な母に、わざわざ心配の種を増やすようなことを言うだろうか。
多分、何度やり直しても、僕は黙っているだろう。
そして、人生にIF は多々あれど、すべて一度きりでもう戻ることは無い。


葬式を終え、荼毘に付し、親族で酒を飲んだ。
本当に久しぶりに親族が集まった。
お袋のことを皆で思い出した。

遺骨は長男である私が持っていった。
思いの外大きく重たい骨壷をアパートに備え付けると、
ネコがやってきて不思議そうに眺めていた。
こんなものをどんなに大事にしてもお袋には届かないんだ、と思うと
なんだかがっかりする気持ちばかりがあふれた。
骨壷は骨壷でしか無く、だからネコは怯えることも警戒することも無く、
家具の間に増えたそれを眺めるだけだった。


孝行したいときに親はなし。
これは多分、どんなに何かをしていても残る気持ちなのだと思う。
返して、返したりた、ということは無いだろう。
それでも、退院したらどこかに連れて行こう、とか、
美味いものでも食べに行こうとか、
そんな風に話していた弟との計画がむなしく思い返された。

たまたまの入院がきっかけで、
年に一度も帰らなかったお袋に何度も会いに行っていたのは、
ほんの少しだけ救われる気持ちがしたが、
何をしていれば、どこまでやっていれば、
後悔の気持ちや残念な気持ちが和らぐのか、
何度考えても答えは出ない。

ただ、再婚した今は天に向かってこう言える。
「死んでびっくりしただろう。実は離婚してたなんて。
でもこうして再婚できたから、安心して見守ってくれ」

…きっとあの世に行った瞬間から、
「おいおいおいお!! いつの間にか離婚してたんか!!」
とだいぶやきもきしていただろうから、
ちょっとは安心してくれてるはずである。

(つづく)