消えかかる記憶の寝言3

渡るつもりなんてなかったのに、人生常々渡り鳥。カトウリュウタの寄港地ブログ。

鎌田が買った酒

友人の鎌田が死んだ。
胃がんとの闘病3年、
最後に残したい、という10曲のレコーディングを終え、
ジャケット、歌詞カードのオーケーを出して、死んだ。

完成したCDを持って故人宅を訪ねると、
奥方が何本もの酒を出してきた。
10本。

「私は酒を飲ま無いのに…」
と奥方は苦笑した。
入院中の鎌田が、Amazonで勝手に注文したのだという。
「また届いたよ」
と文句を言うと、
「あいつらと飲みたいと思って」
と応え、また注文していたらしい。

どんな病床にあっても、
復活して我々と酒を酌み交わすつもりだったのだろう。
酒のセレクトは鎌田の趣味で、
誰もジョニーウォーカーなんて飲ま無いのに…どうするんだよ鎌田、この酒…

もう一度杯を交わしたかった。
涙交じりの酒は、不思議と酔わず、
スルスルといつまでも飲み続けた。