消えかかる記憶の寝言3

渡るつもりなんてなかったのに、人生常々渡り鳥。カトウリュウタの寄港地ブログ。

映画「幼獣マメシバ」

お正月はテレビ局が枠を埋めようとしてか
映画をバンバン流してくれる。
それらを適当にバンバン録画する。
かつてのVHSは録画2時間、
三倍モードで6時間。
それがいまじゃHD画質で50時間以上の連続録画。
人類って、やっぱり進化してるんだろうか。
人、という単位では疑問が残るものの…

例えばこの映画「幼獣マメシバ」の主人公、二郎。
引きこもりニートである。
この現代の奇病が生まれて来るあたり、
本当に人類が進化してるのか疑問に思わざるえない。

んが、んが、しかし、
ニートはともかく、この主人公二郎のような引きこもりは、
実は現代になって始めて現れたわけではない。
かつては、座敷牢をして、親族が社会から切り離したのだ。
抹殺したのだ。

統合失調症、あるいは強迫観念。
私の母がそうであったからわかる。
自分が責められている、という強迫観念がものすごく、
幻聴や幻覚が激しくなる精神疾患で、
よく言われるのが「電波系」
「誰かに見張られてる」
「油断すると殺される」
「殺人電波から身を守るため白い布で家中覆って防いでいる」
そう、あのたぐいである。

この風変わりなタイトルの映画は、
そんな精神疾患と戦いながら成長する男の物語…
ではない。全然無い。
あんまり成長していない。

じゃあおそるべき凶悪な力を秘めたマメシバ
組織から狙われて守っているうちに封印が解けて巨大化…
もしない。全然しない。
マメシバは一貫してマメシバであり、しゃべりもしない。
ただひたすらに可愛く愛くるしく目が丸くて足が太い、
あのマメシバであるだけである。


正直、タイトルだけで録画したのであるが、
あの豆知識を教えてくれるユルキャラ
「豆シバ」のアニメ映画かなんかかと思っていた。
豆知識ゼロ。アニメゼロ。

これは35歳引きこもりニートの、ロードムービーであった。
マメシバはタイトルになっているけど添え物である。
重要な役割とは一応言えるが、
多分ほんとは全然重要ではない。
マメシバでなくてもコーギーでもマルチーズでもグレートデンでも
何でも良かった程度の位置づけである。

35歳引きこもりニートが主役であり、
彼が徹底して良かった。
実に。
佐藤二朗演じる二郎役が半端なく面白い。
キレのある早口のセリフ回しが見事である。

オタクって、あぁいう早口な理知的コメントが好きみたいだよな。
ラノベの表現て大体あれだし。
子供が見ないタイプのアニメもそんなだし。

そんな、自閉症気味な強迫観念に囚われてるわりには
ライトな統合失調症の二郎は、
失踪した母を探して外出する。
母の失踪は引きこもりの二郎を連れ出す策略で
随所随所でヒントを出して来る。

このヒントが無茶苦茶で、
一つ一つ解かれて行く謎があり得なさすぎて、
ここは若干興ざめする部分である。
種明かしされても「そりゃねーわ」という内容ばかり。
ただ、この辺はファンタジーとして楽しむくらいでいいと思う。
ここを真面目に捉えてしまうと映画が詰まらなくなる。

時に映画は、視聴者側に「面白く見る」努力が必要な事がある。
頭を空っぽにして馬鹿口開けて笑っていれば済むような
そんなバラエティ番組ばかりに慣れていると
うまくはまれずに損をする。

…そんで最近のテレビはそんなおバカ製造番組ばかりだけれど
大丈夫なのかな、日本は。
中国韓国の反日反動教育があるけれど、
ああいう例の通り、教育って大事なんだよ?
バラエティ番組ばかり垂れ流して
頭の悪い日本人ばかり作り上げたとしたら
それはテレビ局だって悪いんだよ?
ゆとり教育ばかり責められないよ?

と、相変わらず脱線しつつ、
映画の方を面白く見る努力をして見てたら
(そんな努力なくても主人公のセリフが面白すぎるのだが)
なんだか最後は強烈などんでん返しというか
…どんでん返し、とは違うか、
想像を越えた飛躍があって、

あぁそうだ、映画なんだからこのぐらい飛び抜けてくれちゃって
いいんだよな、と、
自分が常識的な結末を考えていた事が恥ずかしくなる様な
そんなスカッと気持ちのいいラストであった。
なんでそこまで吹っ飛ぶ必要があったのか不明だが。

気持ちのいい映画だった。
安達祐実が出ている、という
予想していなかった嬉しいハプニングもあった。

ただねぇ…
タイトルが、さ。タイトルが。
いい映画なのに、
絶対タイトルで損してる。
付ける必要ないだろ、幼獣マメシバって。

そんなタイトルながら、
偶然見る事ができて、ほんとに良い映画でした。
万人には進めないけど、
物語が変でもセリフ回しを楽しめる人は見てみて下さい。

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