消えかかる記憶の寝言3

渡るつもりなんてなかったのに、人生常々渡り鳥。カトウリュウタの寄港地ブログ。

僕とネコと離婚物語~ 100 %勝利へ~その24

7章「カトウのやったこと」その


「一番素敵な人は、ご飯をいっぱいくれてほっといてくれる人よ」
「そんなヤツはいっぱいいるじゃないか」
ネコの恋愛のハードルは低い。元々誰でもかまいやしないのだ。

欲しいのは自分の安定、欲しいの自分の生活。

「あなたがあたしの毛並みでフワフワと幸せになるなら勝手になればいい」
ネコの毛は有るか無きかの儚く細かい毛。
それをギリギリ感じさせるように、するりと近くをすり抜けたりする。
くすぐったくも、うれしい毛。


「あなたがうれしい。私も幸せ。それはいい関係ってことでしょ」
「そうな。けれど、世の中ってのは天井がない。『もっとうれしい』『もっと幸せ』
点数はどんどんインフレーションを起こしていく」
「そうしたら乗り換えるだけでしょう」

乗り換えるだけである。


私から乗り換えて元妻が選んだ「新車」は、独身だった。
妻と同い年だから若いとは言えない。三十過ぎ。
会社勤めのサラリーマンなんかとは異なる、
若干浮世離れした仕事をしている。

別に詳述してもかまいやしないのだけれど、個人情報は一応置いておこう。
大事なのは(と私が思うのは)
「若干浮世離れした仕事」をしている点だ。

その影響なのか、あるいは単なる人間性なのか、
日本で相当の有名大学卒業のその「新車」はしかし、
法曹関係に明るくなかった。素人、とさえ言えた。

もちろん、大概の人は自分が訴えられることに関しては素人であろう。
そんなにしょっちゅう戦っている人ばかりでもあるまい。
私自身、こんなトラブルは人生初であるのだから、
まぁお互い様であろう。

そのお互い様の差が出たのは、調べるか、調べないか。
Google 先生を駆使するか否か、であった。


不貞行為の慰謝料は下記の要素をもって金額が増減する。
・不貞期間
・不貞回数
・年収
・その不貞行為に起因する損害(離婚など)の有無


であるからわりと機械的に数字は算出される。
あとは、両者がどこで合意するかだけの話である。
一般的な金額は算出できる。
しかし人によって感じ方が異なり、それは値段に現れる。

「金なんかいいからさっさと出てけ、二度と顔を見せるな」
であれば慰謝料無料で妥結できるであろうし
「そんなはした金じゃ全く納得できない! この傷はもっと深い(高い)!」
と主張すれば法外な金額であってもふっかけることができる。

両者の折り合いがつかなければ裁判になる。
裁判になれば裁判所は一般的な金額に落ち着ける。
判例やらの過去ケースで数値を、感情移入なしで決定する。

であるので、ふっかける側(私)も、あまり無茶なことを言っていると
裁判沙汰になった挙句、金額は常識的な範囲(かなり安い)、
プラス裁判費用、という面白くない儲けになる。
ギリギリを、攻めたいところである。


一方の相手側、
不貞行為をした有責配偶者の元妻と、その不倫相手ということになるが、
前回書いたとおり、妻の側には金額的な請求はしなかった。
当たり前に金を持っていそうなのは男側であるのだから。
両方から取ることもできるけれど、私は敵を一人に絞った。


相場の五割増。
これが私の交渉の一手。
当たり前に高いけれど、法外というほど高いわけではない。


不倫相手の男は、とにかく裁判や公的な文書に名前が乗ることを恐れた。
確かに裁判は公開の原則があるので秘密にしていても情報が漏れる可能性はある。
身元を探られればどっかしらからたどり着くことができるだろう。
「不貞行為+慰謝料支払い」の事実が。

再三書いてきたように、不貞行為は法律違反であり犯罪である。
刑事事件ではなく民事であるものの、
裁判判決を受けることになれば
「前科」に分類される種類になりうる。

「前科」についてはWIKI 参照。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%89%8D%E7%A7%91


どんな場合であれ、前科がつくのが面白いわけがない。
前科は消えることがなく、検察庁の名簿に載るらしいので
それを避けるためなら五割、八割といった割増しだって飲み込む方が賢いだろう。

まして、三十代前半、まだ未来があり出世も狙っている年代ならなおさら。


であるから不倫相手は必死に頭を振り絞っていたようである。
だが私本人と直接交渉するのも色々はばかられるので
交渉人は自然、元妻となった。


まとまった金はないので分割払いにしてもらいたい。
慰謝料金額に合意するが、公正証書などの残る文書は避けたい。
契約書や示談書などは無しとし、もし支払いが滞った場合探偵資料を公開すればいい、
それが抑止力となるのでちゃんと支払いを完済する。


相手の交渉のほとんどすべては上記のとおりであった。
しかし書面が残らないことを是としない私はけして了解せず、
これ以上交渉を長引かせるなら訴訟を起こす、と最後通告をした。


相手は折れた。



(つづく)