消えかかる記憶の寝言3

渡るつもりなんてなかったのに、人生常々渡り鳥。カトウリュウタの寄港地ブログ。

アナタといつか餃子皿を

「アナタといつか餃子皿を」
というタイトルの小説プロットを思いついた。

主人公は控えめだけれど多感で若い、
恋に恋する年頃の乙女である。
彼女はいつの日か、恋する男性と餃子皿を共有する日を夢見ている。
餃子皿とは、餃子の小皿、醤油用小皿である。

彼女の中の不文律として、本当に好きになる人でなければ
餃子皿をシェアすることはできない。
潔癖、なのかもしれない。
こだわり、なのかもしれない。

彼女はこれまでに、多くはない間でもゼロではない恋を経験している。
その一つ一つを思い出すとき、酢を入れすぎた時のように甘酸っぱくなるのである。

餃子のツケダレ。
一般的に醤油、ラー油、酢で構成され、小皿でミキシングされる
混合調味料の一種である。
通常ツケダレ用の小皿は来賓客の人数分用意され、各自で配合を調整することになる。
それを・・・その小皿を、共にすることができる男性と出会えたなら…嗚呼…。
それを想像すると、彼女の小さな胸はいつもニンニクマシマシむせ返るように熱くなるのである。

けれども…
理想の男性に程遠い出会いと別れの中で彼女は悲しんでいる。
ある男性は酢を入れなかった。
あの時の彼はラー油が多すぎた。
醤油ばかりで真っ黒にしてしまう彼の時には、
悲しみのあまり泣きながら席を立ってしまう。

そんな女性の淡く切ない物語である。


元々私は、餃子ツケダレのソムリエを主人公にした小説の構想を持っていた。
街の中華屋に似つかわしくないギャルソンスーツに身を包んだ男。
時に仕事に疲れたOL の疲れを癒やす辛味と酢の効いたツケダレを…
時には、力仕事にくたびれたバイト上がりの若者にたっぷり醤油のツケダレを。
餃子ソムリエはいつも相手の表情と仕草にぴったりのツケダレを提供する。
無理強いはしない。
それでも、誰かに餃子のタレを作ってもらいたい、
そんな人のために餃子ソムリエは静かに中華料理屋に佇む。

今日のラー油は、何滴だろう?


…なんて餃子ソムリエの物語は、
ザ・シェフやレモンハートよろしく、
餃子のツケダレを通してニヒルに人々の人生に関わっていく物語で構想されていたが、
あまりにも発展性がなく、ニラとにんにく臭いために恋愛要素が薄めのため、
いまいち物語になりきらずにお蔵入りしていた。

しかし…恋のエッセンスが加われば、自ずと物語は動き出す。
そう、醤油だけで食べていた子供が、はじめてラー油を垂らした時のように。


第一話:あなたのラー油についていけない!
第二話:それでも私は酢を入れる
第三話:多すぎるの…あなたの、とっても…
第四話:はじめての小皿
最終話:もう恋なんてしないなんて言わないで絶対


誰か書いてくれませんか。
この小説。