消えかかる記憶の寝言3

渡るつもりなんてなかったのに、人生常々渡り鳥。カトウリュウタの寄港地ブログ。

僕とネコと離婚物語~ 100 %勝利へ~その17

7章「カトウのやったこと」その

「人は嘘をつくのね」
ネコが欠伸をするしながら言います。
「ツマラナイ嘘を」
「ツマラナイとは限らない」
僕は適当に相槌を打つ。
「嘘は時に人を救うし、時に人を傷つける。ツマラナイ、というほど無意味じゃない」
「ネコは嘘をつかないわ」
ネコが眠そうに丸くなります。
「それがネコだもの」
「嘘はうるおいだよ」
僕も眠そうに言葉を返す。もう一眠りできる時間だ。
「それが人間なんだろうな」




人間は嘘をつく。なんででしょう。
嘘を、墓まで持っていけばそれは嘘じゃない、本当です。
嘘が嘘になるのは、嘘がバレた時です。真実が明らかな時です。
あるいは、メールが見られている時です。


「もう全部終わるんだから嘘はつかないでくれ」
私は妻にいいました。
「もう最後なんだ。嘘なんか必要ないだろう?
 彼と逢いたいなら逢えばいい。セックスしたければするがいい。
 でも嘘はやめてくれ。今更隠しても慰謝料も変わらないよ」


私はあれこれ調べ、有識者を訪ねたりし、慰謝料を算出していました。
相場に、無理ではないけれども困るくらいの金額を上乗せした額。
金が欲しいわけじゃなかった。
もちろん探偵・調査に費やした金額は回収する必要があったけれども
それ以上の金などどうでも良かった。

欲しいのは幸せです。笑顔です。金じゃない。誰だってそうでしょう?

でも私が取った行動は、
(困ったことに選択肢はこれしか考えようもなかったのですが)
金であり不幸であり苦痛でした。
私は不倫相手に制裁として慰謝料を請求したのです。
苦痛となるためだけに金額を上乗せして。
それが何の意味もないことを知りながら。

……まぁもちろん入手経路はなんであれ金は金です。
とりあえずiphone を買った次第です。



其の金額を持ち上げたのは、もしかしたら妻だったかもしれない。
妻と不倫相手だったかもしれない。
妻と不倫相手と嘘。
私は正直今以ても呆れているのですが
なぜ往生際悪く彼女らは嘘をつき続けたのでしょう。
しかも小さなくだらない嘘を。
今更何を隠そうと、守ろうとしていたのでしょう。
あるいは、嘘をつくことで何かを確かめていたのでしょうか。


その小さな不愉快な嘘を書く気にはなりません。
気にはなるでしょうが、読者を不愉快にさせるものばかりです。
私もだいぶん、不愉快でした。不愉快なんてレベルじゃない。
あれだけ嫌な気分はそう無いでしょう。


私も嘘を付いていました。携帯メールを盗み見ていたことです。
私にこんな姑息で卑小なことをさせる妻を憎みさえしました。
であるなら止めればいいのに。
でもなかなか止められません。
何しろ何も信じられないのですから。
言葉もメールも。何もかもがめちゃくちゃで混乱していました。
真実などもともと存在しないかのように。


妻も、何かしらに気づいたのでしょう。
携帯にパスワードをかけるようになっていました。
最近の携帯はパスワードが8桁なんですなー。長すぎ。
妻が寝ているすきに酒を飲みながら気まぐれに数値を打ち込んで遊んだりしましたが
8桁は無理ですね。想像を超える。


妻の誕生日と不倫相手の誕生日らしき数字を組み合わせたり
西暦からいれてみたり
……痛々しいけれど離婚する夫である私の誕生日いれてみたり。


しかしパスワードなんかわからなくてもいいのです。
たった一つの「隙」があればいいのです。
それは思いのほか多いのです。
たった一回ミスがあれば、そこでメールをSDメモリーカードにすべてコピーできるのです。
訳は無い。

既に何度か書いてきてますが
メール作成中など、ロックを解除した状態で「寝落ち」。
それから、帰宅直後。8桁を毎度いれるのにウンザリしてる嫁が
外出中はパスワードを解除していることがあるのです。


前にも書きましたけれど、不倫している人。
メールを丁寧に消すぐらいの手間ひまはかけなさい。
あなたのしている犯罪行為のために、もっと必死になりなさい。
シビアさが足りない。真剣さが足りない。
携帯を二台持って片方を隠して安心している人。
まず「安心」することをやめなさい。厚かましい。
犯罪者は犯罪者らしくもっと戦々恐々として生きるべきなのです。
時効をひたすら待つ殺人犯のように眠れない日々を過ごすべきなのです。

そのくらい、真剣さがあるべきなんです。戦いに際しては。


そして、できるならば、
村上龍も言ってます、夫のいる女とは寝ない。
妻の居る男とは寝ない。
離婚しなさい。簡単だよ?
法律を犯してまでしなければならない恋愛なんてやめて、
離婚してから恋愛しなさい。

どうしてその程度の順番が守れないのですか?



妻は多くの順番を間違い、やりとりを間違い、
私との交渉を決定的にミスしました。
残念でならないぐらいに下手くそでした。
挙句嘘ひとつ、貫けない。メールを消すぐらいの手間ひまかけた嘘をつけばいいのに。


割合簡単な話だったのです。
好きな男が出来た時点で私に離婚を申し出れば良かった。
そうすれば慰謝料を取られるどころかもらえたかもしれない。
少なくとも財産分与にあずかれた。

あるいは不倫がばれたあとで大人しく殊勝に振る舞い、
慰謝料を少しでも軽減してもらえるようにすれば良かったのです。
離婚が成立するまでが二ヶ月として、100万減額できるとしたら
どれだけの費用対効果でしょう。


うかつ。
それが残念でなりません。
その迂闊さは、自らを損させ、好きな人(不倫相手)を損させ、
少なくともかつては愛した(はず)の夫をイヤというほど気落ちさせた。

時折思うことなのですが
ダメな人間は自分だけじゃなく周囲を巻き込む。
頭が良く利発で理知的な女性と思って結婚した妻の、
最後のダメっぷりに私は呆れる他なかったのでした。


(つづく)